June 09, 2003

フェルマーの最終定理

book001.jpg一度は耳にしたことがあるだろう「フェルマーの最終定理」。永遠に解けないであろうと思われていたフェルマーの残した人類に対する挑戦。

実は古本屋で見つけたんですが、決して難解な数学の本ではありません。むしろ数学という知の神様の真理に挑む数学者のアドベンチャーといった物語です。

この本を読んで改めて数学の面白さを再認識したところです。中学の数学の時間で習ったであろうピタゴラスの定理。そこから延々と続く真理の探究。数学哲学であるんだなと実感します。
自分では出来ないかけ離れた分野ゆえ数学とそして数学者に対して憧れと尊敬の念を禁じえません。

同時に、この簡単そうに見える「ピタゴラスの定理」さえ改めて自分で何故そうなるのかを理論的に思考を推し進めていたときフェルマーの虜になった数学の面白さ(の一部)に感動します。
ちょっとづつ数学のカテゴリーも作ろうかなと思った、リスペクトすべき本でした。

[フェルマー最終定理]
3以上の自然数nに対してxn + yn = znを満たすような自然数X、Y、Zはない。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」

ピタゴラスの定理は
x2 + y2 = z2
であらわされている。

これを
xn + yn = zn
というふうにしたとき、「nが2より大きいばあいは整数解をもたない」としたのがフェルマーの最終定理である。ピエール・ド・フェルマーが1637年ごろに発見したのだ。

すばらしい発見であることはすぐに誰にもわかったが、この定理の証明ができない。計算をしてみると、どうもこの定理は正しそうなのに、どうしても証明がつくれない。なぜなのか。それもわからない。

このようなフェルマーの最終定理が世界最大の難問として3世紀にもわたって数学者を魅了し、また震えあがらせてきたのは、この難問が生じた経緯に関係がある。数の神秘という経緯、数学的にいえば数論の魅力の深みとの関係である。

もともと神秘的な思考の持ち主だったピタゴラスは数の完全性というものに関心をもっていた。ピタゴラスは数の完全性はその数の約数によって決まると考えた。とくに約数の和がその数自身と同じになる数こそが完全数だとみなした。たとえば12の約数は1・2・3・4・6である。これは足すと16になる。こういう数を過剰数といった。10は1・2・5が約数だが足しても8にしかならないので不足数とよばれた。

完全数でいちばん身近な例は6である。約数1・2・3を足すとちょうど6になる。次の完全数は28で、1+2+4+7+14=28というふうになる。ピタゴラスの教団にとって、こうした完全数は信仰の対象とすらなった。
しかし、この完全数はそんなに容易には見つからない。実際にも、28の次の完全数は496、4番目は8128で、5番目は33550336、6番目になると、なんと8589869056というふうに大きくなる。

 ピタゴラスは友愛数というものも提案していた。友愛数はペアになった二つの数で、一方の数が他方の数の約数の和になるようなものをいう。ピタゴラス教団は220と284が友愛数だというめざましい発見をした(220の約数の1・2・4・・・55・110の合計は284で、284の約数の合計が220になる)。

フェルマーも完全数や友愛数に興味をもっていた。ピタゴラス以降、友愛数は220と284のペアしか見つけていない。フェルマーはただちに17296と18416のペアを発見した。この発見は友人たちを刺激して、デカルトは3番目のペア(9363584と9437056)を発見し、オイラーにいたっては楽々62通りものペアをあげてみせた。

調子にのったフェルマーは、さまざまな奇妙な発見をする。たとえば25・26・27という整数の連続には、26が25(5×5)と27(3×3×3×3)に挟まれるという特徴をもっている。
いろいろ調べてみると、このような26にあたるような数がほかにないらしいことがわかった。フェルマーは得意になった。ほかにそういう数があるなら出してみなさいと言わんばかりなのである。

こうしてフェルマーはピタゴラスの式をいじって、驚くべき発見に至ったのである。それがフェルマーの最終定理とよばれたものになる。
フェルマーはこう書いていた、「ある3乗数を二つの3乗数の和であらわすこと、あるいはある4乗数を二つの4乗数の和であらわすこと、および一般に2乗よりも大きいベキの数をおなじベキの二つの数の和であらわすことは不可能である」。

数学者が数の神秘に酔っていることは事実である。のみならず多くの数学的発見はその発見をすることが目的で、それ以上の目的をもっていないことさえ多い。G・H・ハーディは「最高の数学のほとんどは何の役にもたたない」とまで言った。
しかし、芸術だってそういうものである。新種のチョウ発見や大半の名前のついていない星の発見だってそういうものだ。しかし、その純粋な探検心が天文学を変え、生物学を転回させ、数学を新たな地平へ運ぶことがある。はたしてフェルマーの最終定理も、それが解けたところで何の役にたつかという野次馬議論がずうっと続いていた。

すぐれた数学史家であったE・T・ベル(ぼくはこの人の数学史で育った)は、「おそらく文明はフェルマーの最終定理が解かれる前に滅びるだろう」と言い、数学屋の仲間のあいだでは、次のようなジョークが流行したらしい。「あるとき悪魔が人間に難問を出したので、困りはてた人間が思いあまってフェルマーの最終定理のことをちらつかせたとたん、さっと悪魔が姿を消したとさ」。

しかし本書が説得力をもって案内しているように、オイラー、ソフィー・ジェルマン、コーシー、ランダウ、リーマン、ラッセル、 フレーゲ、フォン・ノイマン、チューリング、ゲーデルらがはたした功績の数々は、どこかで必ずフェルマーの最終定理の謎と結びついていた。

本書の後半の白眉は谷山豊と志村五郎による「谷山=志村予想」についての箇所で、この二人が果たした数学上の画期的な役割を著者がそうとうに力をいれて叙述してみせたことにある。もう一人、岩澤理論で有名な岩澤健吉も登場して、日本の数論が気を吐いている。

ふつうフェルマー競争をめぐってのレポートや記事で、谷山・志村の功績が称えられることは、まず少ない。ときにはまったく無視される。とくに欧米の一般解説書や一般記事では(フェルマーの最終定理が解かれたとか懸賞金が出たというニュースは大新聞の一面を飾ったほどのニュースなのである)、わざとというくらいに無視される。それを本書は覆してくれた。

実はフェルマーは、最小定理の提起とは別に楕円方程式(楕円曲線ともいう)の整数解についての研究もしていた。説明は省くが、この楕円方程式の問題を解くことが20世紀後半に入ってからのフェルマーの最終定理を解く近道だというアプローチが浮上していた。本書の表むきの主人公であるアンドリュー・ワイルズが世界最大の難問にとりくみはじめたときも、この楕円方程式からのアプローチを突破口にしようとしていた。

ところで一部の数学者には、数学の基礎演算は加法・減法・乗法・除法の4つではなく、これにモジュラー形式を加えた5つでできていると断ずる者がいる。モジュラー形式はおそろしく対称性が高い性質をもった"操作性"のことで、ロジャー・ペンローズやM・C・エッシャーの図形移動で有名になったように、すぐれて数図形的な性質ももっている。

このモジュラー形式を関数として解くことと楕円方程式をとくこととのあいだに密接な関係があること、さらにはそれはフェルマーの最終定理の謎を解くことにつながるのではないかということを予想したのが、「谷山=志村予想」である。
ところが、このニュースが世界を駆け回って数学者たちを驚かせていたまさにその渦中、谷山豊が自殺をしてしまう。女性問題の悩みだったらしいが、真相はわからない。相手の女性も後追いをしているので"天才数学者の心中事件"とさえ言われた。

 けれども「谷山=志村予想」は強大な威力を発揮する。とりわけゲハルト・フライはフェルマー方程式を楕円方程式に変換することで谷山=志村予想の正当性を証明し、さらにはフェルマーの最終定理の真偽は谷山=志村予想が証明できるかどうかにかかっていることを告げた。
このことをやってのけたのがアンドリュー・ワイルズである。結局、世界最大の難問を解いたというニュースはワイルズ一人の名誉に集中したが、それを支えていたのは二人あるいは三人の日本人の思索であった。

Posted by 門番 at June 9, 2003 01:02 AM | トラックバック

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フェルマーの最終定理の続編の件。以下の抜粋内容(詳細は別途6頁添付ファイル有)で詳細を何処かに発表する事が目的です。
内容1として、アンドリュ-ワイルズにより1994年10月に発表後1995年5月[数学年報]に載って承認されました。
『xのn乗 + yのn乗 = zのn乗 でn が3以上の整数での自然数(x,y,z)の組合は無い。』・・・20世紀に証明済
この問題の証明でn が3未満の時の記述(存在時には自然数の組合の列挙)が無いのが不満で、
『xのn乗 + yのn乗 = zのn乗 でn が3未満の整数での自然数(x,y,z)の組合を列挙する』を問題とした。
n = 2 の時 ピタゴラス数を列挙
n = -1 の時 自然数(x,y,z)調和数を列挙
n = -2 の時 自然数(x,y,z)を列挙
n = 1 の時 無意味除く、n = 0 不可、n ≦ -3 の時 不可の証明はワイルズの方法を利用した。
結論 n = 2,-1,-2の時 全自然数(x,y,z)の組合を列挙(ここでのx,y,zの3数を次々と表示するアルゴリズムです)した。
★内容1として、フェルマーの最終定理の証明はアンドリュ- ワイルズにより1994年10月に発表後1995年5月[数学年報]で承認済。
『xのn乗 + yのn乗 = zのn乗 でn が3以上でなく3未満の整数での自然数(x,y,z)の組合を列挙した』
★内容2としてフェルマーの最終定理型の[漸化式 A(n + 1)^m = A(n)^m + Constant^mで(n=1,2,3・・・),Constant>0]
A(1)からA(n)迄の相加平均と相乗平均でリミットnを無限にして 相加平均 / 相乗平均 が収束値を持つ事です。
内容1,2をexcelで作成、数学協会や放送大学へ郵送(メインの2頁)しましたが返事は案の定、皆無。
発表済か内容が拙いか単なるトリビアか 数学歴史的発見になるか
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From 安田隆之
詳細はexcelで作成しました、添付ファイルでの送信する価値が有りそうなら返信して下さい。

http://www.ngm.edhs.ynu.ac.jp/negami/dai3nori/hosoku/hosoku14.html

数の世界
http://www1.fctv.ne.jp/~ken-yao/Fermat.htm

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